「S力人情商店街1」(令丈ヒロ子)

S力人情商店街 (1) (YA!フロンティア1)

S力人情商店街 (1) (YA!フロンティア1)

 岩崎書店の新レーベル「YA!フロンティア」の第一回配本の一冊です。ロリコンの神様に超能力を与えられた中学生4人組が商店街を防衛するお話です。作中でもほのめかされていますが、「アベノ橋魔法☆商店街」がネタ元のひとつになっているようです。令丈ヒロ子もずいぶんマイナーなアニメを知っていますね。
 舞台はさびれた商店街。主人公の茶子は喫茶店の娘です。冒頭、茶子の店で男子三人がぐだぐだとだべっている場面ですぐに作品世界の空気に引き込まれます。このゆるい空気は、彼らがこの先衰退していくしかない世界に生きていることによるものなのだと思います。第一巻のエピソードからも子供たちが商店街の行く末をシビアに見据えていることがわかり、物語がどういう方向に落ち着いていくのか期待させてくれます。
 茶子は予知能力、靴下屋の息子吾郎は瞬間移動、花屋の息子吉野は念動力、写真屋の息子研は念写と、子供たちはそれぞれ超能力を与えられます。どれも基本的なだけに応用の利く力なので、限定された条件の下でいかに能力を生かして商店街の危機を解決するのかというところが見所になっていくはずです。令丈ヒロ子の技術は折り紙付きですから、この設定で面白くならないはずはありません。間違いなく「YA!フロンティア」の屋台骨を支えるシリーズになるでしょう。