「Two Trains」(魚住直子)

 魚住直子の初短編集です。彼女は短編もいけますね。誰と一緒にトイレに行くかというようなことが最大の懸案事項である女子の日常を生々しく描くのが魚住直子の持ち味です。短編だとその生々しさがさらに凝縮されていて読ませます。
 たとえば「ミジュク」は、児童からばかにされている音楽の先生を観察する女の子の物語ですが、彼女は先生に対して非常に手厳しい見解を示します。

だけど、子どもなんてきびしくしなかったら、なめてかかるのは当たり前で、そんなこともわからずに学校の先生をしているというのは、やっぱり相当、罪が重い。(p43)

 小学生はこのくらいは冷静に大人を見ているものです。そして、このあと先生を待ち受けていた運命はまさにこの世の地獄でした。これは怖かった。
 しかしこの短編集、ひどい絶望ばかりが描かれていますが、それ以上に希望もきちんと描かれています。そこがまたすごいです。ぜひまた彼女の短編を見てみたいです。