- 作者: 皿海達哉,牛の会
- 出版社/メーカー: 田畑書店
- 発売日: 2007/02/01
- メディア: 単行本
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日比茂樹の「意外な二人」は自分の名前をアナグラムすることが流行っているクラスで席替えが行われるお話。自分の名前の中に好きな女子の名前が含まれていることで喜べる他愛なさがよいです。
幸路秀人の「柿」は男子が小悪魔的な女子にもてあそばれるお話で、わずか4年生でありながらいっぱしの悪女っぷりを発揮するヒロインに戦慄させられてしまいます。
安部公房作品を髣髴とさせるタイトルの石浜じゅんこの「箱の男」は良質のホラーでした。赤紙が来た息子を小さくして箱の中に閉じこめ、その箱の中に息子のために世界をこしらえる母親の物語です。単なる反戦読み物をこえ、母親という存在の業の深さに迫っている力作です。
そしてとどめが皿海達哉の「プールのジョン」。主人公の亮太は飼い犬のジョンと一緒に深夜の学校のプールに忍び込んでゆったりと時間を過ごすことを習慣にしていました。ところがそこを素行のよろしくない若者たちに見つかりリンチを受けることになります。ジョンは殺され、被害は家族にまで及びます。世界に暴力が存在していることから目をそらさず、人間の負の面をしっかり見つめているからこそ、皿海達哉にはこのような迫力のある表現ができるのでしょう。