- 作者: 田村理江,堀川理万子
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1997/09
- メディア: 単行本
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飛雄は引っ越してきてから、家の近くにある森の中で遊んでいるのだと報告するようになりました。森の中には町があって、飛雄の家まであるのだというのです。道雄ははじめこれを飛雄の空想だと思っていましたが、やがてそこは魔物のつくった世界だと確信するようになります。嫉妬に駆られた道雄は、飛雄を森の中の魔物の世界に置き去りにしようとたくらみます。
兄弟間の嫉妬は、卑近すぎるゆえに正面からテーマにされることはあまりありません。弟を捨てるか助けるか、道雄の気が数ページごとに変わってしまうのには辟易してしまいますが、この感情の波のはげしさにはリアリティがあります。迫力を持って難しいテーマに挑んでいる作品だと思います。
日本の片田舎に洋風の異界を設定しているのもミスマッチで面白いです。ただし田舎に珍しい金髪の女性がふたり出ていることが別に伏線にもなんにもなっていないようなのが気にかかりました。