「マキの廃墟伝説 ホーンテッド・シティー物語」(山中恒)

マキの廃墟伝説―ホーンテッド・シティー物語

マキの廃墟伝説―ホーンテッド・シティー物語

 交通事故にあって軽く臨死体験してしまったマキ。彼女は目を覚ましてから「半分はねむっているみたいに、ぼうーっとして、ときどきにやっと笑ったり、わけのわからないことをいったり」するようになってしまいました。開始2ページで山中恒お得意のいかれた主人公のできあがりです。
 臨死体験をして死者の町ホーンテッド・シティに足を踏み入れてしまったマキはホーンテッド・シティの特別自由市民に任命され、市長の命令で幽霊に関わるトラブルの処理にこき使われることになります。
 死者と廃墟というテーマが山中恒の乾いた文体によくマッチしています。最後のエピソードなどはちょっと説教入りすぎのような気もしますが、それすら淡々と流され、マキの尋常でない日常がこのまま続いていくことを予感させて物語は幕を下ろします。非日常を強固な現実として固定してしまう筆力に脱帽します。