「新シェーラひめのぼうけん5 妖精の庭」(村山早紀)

 天才魔法つかいサウードがいるという噂の赤い岩の町にたどり着いた一行。その町にはかつて清らかな魔法つかいが自分の命を引き替えに人々の願いを叶えたといういのりの塔がありました。ルビーはいのりの塔を囲む墓地でダンスをしている7人の子供と友達になります。
 一方ペガサスの騎士ミシェールは、砂漠を歩いているサウードと出会いました。サウードは自分の未熟さに悩むミシェールをかつての旅の仲間ファリードに重ね合わせ、しばらく彼と行動を共にすることにします。はたして王女たちはサウードと合流することができるのでしょうか。
 人生初ナンパで男(ハッサン)に声をかけてしまったミシェールは、2度目のナンパでサウードに挑戦し、またしてもはずれを引いてしまいます。この子もおいしいキャラになってくれました。でもそれ以上においしいのはやはりサウード。自分で「ゆうめいな正義の旅の魔法つかいサウード」と名乗り、ミシェールが自分を知らなかったのでがっかりしてしまいます。このふたりが組んだらエンドレスでボケ続けてくれそうです。
 しかし本筋の方はどんどんシリアスになっていきます。ルビーが出会った子供たちは、いのりの塔で罪深い人類を消し去るために「世界をほろぼすもの」を召還し、命を落としていました。このシリーズでは子供は大人のおかした間違いの犠牲になる存在として描かれているようです。それでも子供は未来に生きて欲しいという痛切な作者の願いが胸に響いてきます。これを読んだ子供には「子どもは、思想や正義のために死んではいけないのだよ」というサウードの言葉だけは忘れないでもらいたいです。