「新シェーラひめのぼうけん4 炎の少女」(村山早紀)

 仲間の中で自分だけが劣っていると思いこんでいじけたジュドル王子が、自分で発明した小型のヘリコプターでプチ家出をするお話。ファリードの役回りはサファイヤではなくジュドルが引き継いだようです。サファイヤの見せ場はジュドルに説教をかます場面。彼女のキレ芸は実に爽快です。
 この巻ではじめて敵側の異世界の魔物が人格を持った存在として描かれ、シリーズのひとつの方向性が見えてきました。物語の冒頭、子供たちは魔物の感情について話し合います。ルビーは人を襲う魔物に対して「ひょっとして、ほんとはやだなーとか思ってたら、かわいそうだよね」と共感を寄せます。
 第4巻では、自分の暴力性と人間を愛する気持ちの間で葛藤する二匹の魔物が登場します。魔物として覚醒したジュドルの友達のチニは、ジュドルを傷つけないために彼の元を去ります。新キャラの少女ナルダの父親代わりをしていた白いけものも魔物になってしまい、こちらはライラに殺される道を自ら選びました。行方不明のチニとライラを仇を狙うナルダがこれからどう物語に関わってくるのか、見物です。