「新シェーラひめのぼうけん8 伝説への旅」(村山早紀)

 8巻の主役は準レギュラーのナルダとミシェールです。自分の父親が罪人であることを知ったミシェールは、父の代わりに罪を償うためにシェーラザード王国に向かいます。一方ナルダも王女たちに再会するためにシェーラザード王国を目指していました。ふたりは港町で出会い、そこで遭遇した異世界の魔物と戦うことになります。
 忘れてならないのが、旧シェーラのレギュラーでありながら今まで出番のなかったあの人がやっと登場したことです。待たせただけあってとびきりの見せ場が用意されていました。ものすごいことを成し遂げたのに全然おごらず、それを未来を担う子どものために惜しげもなく差し出してしまう。こういう歳の取り方をしたいものだとつくづく思ってしまいました。
 さて、今回はナルダとミシェールのみで異世界の魔物と戦うことになります。戦力的な不安は否めません。しかしナルダは説得して魔物を退去させてしまいます。この瞬間「新シェーラ」の主役の座はナルダが奪い取ったと言っても過言ではないでしょう。
 物語の序盤では単なる人類の敵だった異世界の魔物の立ち位置が、人類の犠牲者へとダイナミックに変容していくのが興味深いです。異世界の魔物との戦いは終わり、これからは異世界の魔物への贖罪の物語になっていきそうです。