児童文学の文庫化について(柊ちほさんへの返信)

児童文学 文庫化の謎【しあわせは日々のなか】

 出版事情に明るくない一読者からすると、講談社から出た『アーモンド入りチョコレートのワルツ』『つきのふね』『DIVE!!』がなぜ角川文庫に落ちたのかちょっと不思議です。たつみや章魚住直子風野潮梨屋アリエ草野たきといった講談社児童文学新人賞出身者の作品は、ぞくぞくと講談社文庫になっているのに。
 でも、講談社が児童文学を文庫化しだしたのはけっこう最近のことだったような……と思い、先ほど名前をあげた5人の作家の作品の中で、いちばん最初に文庫化されたのはどれかなーと調べてみると、梨屋アリエ『でりばりぃAge』と風野潮『ビート・キッズ』でした。2006年4月のことです。講談社の児童文学作品文庫化ラッシュが始まったのは、このへんからだと思われます。
 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』や『つきのふね』が2005年に文庫化されているのを考えると、角川の方が早くからヤングアダルトと呼ばれる作品の文庫化に熱心だったのかな。(ちなみに『バッテリー』1巻が文庫化されたのは2003年12月)。

 2006年以降に文庫化された、たつみや章魚住直子風野潮梨屋アリエ草野たき、それから福永令三クレヨン王国の十二か月』やルイス・サッカー『穴』などは、背表紙の色がほぼ同じですよね(チェックしきれてないと思うので、もれがあったら指摘してください)。児童文学はこれで統一されるのだろうか。
 あ、でも、あさのあつこの「NO.6」はたしかその色じゃなかったはず……はやみねかおるも違った気がするけれど、どうだったっけ。背表紙ベージュは講談社児童文学新人賞受賞作家か海外YAに限られるんだろうか……。明日本屋さん行って調べてこよう……

 昨日の記事に柊ちほさんから迅速なレスポンスをいただきました。ありがとうございます。聡明で誰よりも本を愛しているちほさんを尊敬しています。

森絵都作品の文庫化について

 ご指摘のように、講談社から出た森絵都作品が角川文庫に落ちた件については、わたしも疑問に思っていました。事情を知らない身からすると、講談社とけんかでもしたのかと邪推したくなってしまいます。特に「DIVE!!」なんかは当時としては珍しいソフトカバーの体裁で出て成功し、「YA!ENTERTAINMENT」の先駆者になったわけですから、講談社が手放す理由が考えられません。
 単に講談社森絵都金のたまごを産むニワトリだということに気づかないでいるうちに、角川書店に横からさらわれていったということなのでしょうか。ちほさんの整理で明らかになったように、講談社がYAの文庫化で角川書店におくれをとったと考えると説明はつきますね。

講談社文庫の背表紙の色について

 これまた懐かしいネタを提供してくれて……。講談社文庫は背表紙の色と作品・作者名が結びついて記憶に残るのがにくいですね。
 1973年の「だれも知らない小さな国」は水色でしたっけ。そのあとから出ていた佐藤さとるの「ファンタジー童話集」はすべて緑色だったように記憶しています。
 松谷みよ子のほかにもあまんきみこ安房直子、立原えりから女性作家はピンク色でした。
 現在のYA作品の背表紙の色が統一されていることは、いわれてみるまで気づきませんでした。ちほさんの観察力に敬服します。

YA作品の文庫化について

 時系列で考えるとおもしろい傾向が見えてきますね。さすが角川書店は先見の明があったというところでしょうか。角川文庫ではほかに川島誠作品もこのジャンルに入れられると思います。2002年6月の「800」から始まり、立て続けに数冊刊行されています。
 他の文庫に目を向けると、新潮文庫も重要な役割を果たしています。1994年3月の「夏の庭」(湯本香樹実)、2000年12月の「裏庭」(梨木香歩)、2001年7月の「西の魔女が死んだ」(梨木香歩)なんかは、もう夏休みの読書感想文の定番になっています。
 あとは新興のピュアフル文庫あたりをフォローしておけば、ここ10年くらいのYA作品の文庫化の流れを概観できると思います。