「山手町探偵クラブ」(那須正幹)

山手町探偵クラブ

山手町探偵クラブ

 章のおばあちゃんは大の探偵マニア。ぐずる子供を歯医者に連れて行こうとするお父さんを誘拐犯人と誤解して、おばあちゃんが回し蹴りをヒットさせる場面から物語は始まります。冒頭がこんな感じなので、全編サービス満点の娯楽作品に仕上がっています。
 おばあちゃんは町の発明家で特許で大もうけしており、大変なお金持ちです。家の広さは球場なみで門から屋敷まで30メートルもあるとのこと。盛大に誇張しています。
 章とおばあちゃんはゆくゆくは探偵事務所を開く計画なのですが、章はあまり乗り気ではなく探偵としての素質もいまいちでした。そこで、章の同級生三人も巻き込んで探偵倶楽部を結成することになります。そして、おばあちゃんは探偵の訓練と称して宝探しをさせたり、拳法の練習をさせたり、はたまた探偵グッズとして発煙筒やロープを支給してみたりします。このように探偵になるための道筋を細かく提示し、読者に疑似体験を楽しませるのが那須正幹のテクニックなのでしょう。それが本当に探偵の役に立つかはあやしいですが、そのうさんくささも含めて面白いです。