「耳の聞こえない子がわたります」(マーリー・マトリン)

耳の聞こえない子がわたります

耳の聞こえない子がわたります

 夏休みに引っ越しをすることになった引っ込み思案な少女シンディはすぐに隣人の少女ミーガンと友達になりました。ミーガンは難聴という障害を抱えていますが、性格はシンディと正反対の積極的なタイプでした。紫一色の部屋に暮らし、ちょっとくさい老犬をかわいがっているミーガンの強烈な個性にシンディは終始圧倒されます。でも不思議と二人は馬が合い、無二の親友になりました。ところがサマーキャンプに参加してミーガンに同じ障害を持った新しい友達ができてから、二人の関係はぎくしゃくしてしまいます。
 非常によくできたありふれた友情物語です。ミーガンの障害はふたりの関係を変容させる道具として機能していますが、それは他の属性でも置き換え可能です。障害を過剰に特別視することなく、当たり前のこととしてありふれた友情物語を成立させたところがこの作品の美点です。爽快な読後感が保証できます。