「ぶっとび!スクール」(たからしげる)

ぶっとび!スクール (フォア文庫)

ぶっとび!スクール (フォア文庫)

 フォア文庫のたからしげる短編集第3弾。解説が石井睦美だというのが意外でした。今回も日暮坂小学校で不思議な事件が続発します。
 が、今回はよくまとまっていてオチもちゃんとある話が多くて物足りなかったです。まとまっているから文句をつけるというのもひどい話ですが、たからしげるは投げっぱなしの作品を輝かせることができる稀有な作家なので仕方がありません。
 ブラックでおもしろかったのは「異種間同時通訳装置」です。補聴器のような万能通訳機を拾ってしまった少年の物語です。彼が飼い犬に人間の言葉がわかるか尋ねたところ、こんな答えが返ってきました。

「人間の言葉でわかるのは自分の名前のほかに、おすわり、まて、よし、おて、おかわり、ふせ、こい、ばか、くそ、あほ、頭わるいんじゃないの、くらいかな。あとは顔色をみて判断するの」(p66-p67)

 期せずして殺伐とした家庭の状況が明らかになってしまいました。ラストも気持ち悪いまま投げていてすばらしかったです。