「ブランク 空白に棲むもの」(倉阪鬼一郎)

ブランク―空白に棲むもの (ミステリーYA!)

ブランク―空白に棲むもの (ミステリーYA!)

 理論社「ミステリーYA!」一年目最後の作品です。
 被害者の髪が急に白くなり、やがて頭部が爆発するという怪事件が続発します。犯人は(最初から明かされているので書いてしまいますが)マッドサイエンティストで、宇宙の果てから旧支配者を召喚して事件を起こしていました。そして探偵は超能力者。どう転んでもまともなミステリになりそうにありませんが、なんと「読者への挑戦状」まで付けてきっちりミステリとして仕上げています。犯人は最初からわかっているので、被害者に共通するミッシングリンクを探るのが謎解きのメインになっています。
 圧巻なのはラストの人間と邪神の戦いです。超能力探偵と天才将棋少年が人類の叡知を武器に勝ち目のない戦いに挑みます。恐怖と緊迫感とばかばかしさの調和が見事。やはり倉阪鬼一郎紙一重の天才でした。旧支配者と□が戦うなんて発想は他の誰にもできないでしょう。
 この作品で初めて倉阪鬼一郎に触れた若い読者には、ぜひデビュー作の「地底の鰐、天上の蛇」を読んで当代指折りの幻想文学を味わってもらいたいと思います。