「天山の巫女ソニン3 朱烏の星」(菅野雪虫)

天山の巫女ソニン(3) 朱烏の星

天山の巫女ソニン(3) 朱烏の星

 悲しい話でした。「天山の巫女ソニン」第三巻は少数民族の弾圧がテーマになっていました。国民の圧倒的な支持を集める「狼殺しの王」が治める巨山に赴いたソニンとイウォル王子は、王に虐げられている「森の民」の反乱に巻き込まれることになります。
 天山の巫女として世間から隔絶されて育ったソニンは、知識以外寄って立つものを持ちません。そんな彼女だからこそ、誰からも顧みられることのない少数民族や隠蔽された歴史に思いを馳せることができます。裏を返せば、寄って立つものを持っている人間は目が曇って見なければならないものが見えなくなってしまうことになります。
 ただしこの物語には希望がありました。それは「狼殺しの王」の娘でありながらなかったことにされるもろもろを忘れないことを誓ったイェラ王女の存在です。沙維・江南・巨山の三国の情勢がますますきな臭くなっていくなかで彼女がどんな役割を果たしていくのか、今後が注目されます。