- 作者: アーサービナード,古川タク,Arthur Binard
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2008/08/01
- メディア: 単行本
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もっとも印象に残ったのは「ふつうの小学生」という作品です。冒頭の部分を引用します。
ぼくは、ふつうの小学生だけど
いつも、じっとしていられない。
静かなほうがいいので、お医者さんから
リタリンという薬をのまされている
「ぼく」はADHDと診断されている子供なのでしょう。「ぼく」の机にはたくさんの張り紙が貼られています。
「友だちをぶちたくなったら
十をかぞえましょう」
「ものをなげたくなったら
十をかぞえましょう」
「かみつきたくなったら
十をかぞえましょう」
張り紙に取り囲まれた「ぼく」は、自分の体中にも張り紙が貼られているような気分になってしまいます。
ADHDの治療薬としてリタリンを処方することは単なる医療行為ではなく、多動であることをよしとしないひとつの思想の実践です。この作品はその思想の息苦しさを伝えています。そして「ぼく」の感じた息苦しさを詩を通して共有した読者は、ADHDとは診断されていない自分たちもリタリン的な思想に包囲されていることに気づかされます。