- 作者: 長薗安浩
- 出版社/メーカー: ゴブリン書房
- 発売日: 2008/06
- メディア: 単行本
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世界の秘密を知りたいという少年らしい欲望が、この作品では蒐集欲という形で表現されています。それは「あたらしい図鑑」のスクラップと、詩人と出会ってから持ち歩くようになった国語辞典を使っての言葉の蒐集の両面からアプローチされていきます。単語から単語へ果てしなく続く言葉の森の冒険がこの作品の大きなみどころです。たとえば少年がひまわり娘のことを思いながら「精液」「生殖器」「有性生殖」「生理」「月経」「成熟」と単語をたどっていく場面。辞書に記された意味をたどりながら「彼女は定期的に子宮から出血している。彼女は熟している」という確信にいたる過程は、ただ辞書を引いているだけなのにドラマチックにみえます。
少年の自意識の目覚めがみずみずしく描かれている良作でした。