「科学探偵部ビーカーズ! 出動!忍者の抜け穴と爆弾事件」(夏緑)

科学探偵部ビーカーズ!―出動!忍者の抜け穴と爆弾事件 (ポプラポケット文庫)

科学探偵部ビーカーズ!―出動!忍者の抜け穴と爆弾事件 (ポプラポケット文庫)

 東京都才円巣区立野辺流小学校(ひでえ名前だ……)には、科学探偵部と呼ばれる奇妙なクラブがありました。科学探偵部に所属するのは天才発明少年孫エイジ(ひでえ名前だ……)と、天才推理少女胡瓜マリ(ひでえ名前だ……)。彼らは学校内で起こるどんな難事件も即座に解決し、校長からも厚い信頼を受けていました。そんな野辺流小学校が爆弾を持った犯罪者集団に占拠されてしまいます。難を逃れた孫エイジと胡瓜マリは、たったふたりで犯罪者に立ち向かいます。
 というわけで、学園ダイ・ハード小説です。この作品の最大の読みどころは、探偵役の胡瓜マリと犯人の心理戦です。犯人を欺くためにミスリードを仕掛ける手口のあざやかさ、かよわい小学生の身でありながら時間稼ぎのために舌先三寸で犯罪者集団に挑むシーンのかっこよさ、彼女は本当に魅力的な探偵です。今回は犯人がおばかでしたが、今後主人公に匹敵する頭脳を持った犯人が登場すれば、デスノートばりの読み合いが繰り広げられてさらに盛り上がるはずです。
 さて、胡瓜マリのかっこよさの理由は、彼女が小学生でありながら誠実な自然科学の徒であるところにあります。彼女はだいたい4ページおきくらいに尊敬するキュリー夫人を引き合いに出して熱いお説教を繰り広げるので、少々うざったいことは否定できません。しかし自然科学の徒である彼女の立ち位置は一貫していて全くぶれることがないので、彼女の前では問答無用でひれ伏すしかありません。わたしの知る限りでは、現在の児童書ミステリ界に彼女以上に魅力的な探偵はいません。ぜひ長いシリーズになってもらいたいです。