「ハピ☆スタ編集部 インタビューはムリですよぅ!」(梨屋アリエ)

インタビューはムリですよぅ!―ハピ☆スタ編集部 (フォア文庫)

インタビューはムリですよぅ!―ハピ☆スタ編集部 (フォア文庫)

ダメなのは、ダメですか?

 これは、この本の第5章のタイトルです。なんと哲学的な問いなのでしょう。一見同語反復しているだけのように見えながら、人間の業と原罪をえぐり出そうとする野心が感じられます。
 姉の陰謀で無理矢理小中生向けファッション誌「ハピ☆スタ」の子ども編集長にされてしまった未来乃の受難の物語「ハピ☆スタ編集部」の第3弾です。巻を追うごとに未来乃のダメ人間っぷりに磨きがかかって、彼女から目を離すことができません。2巻の最後を思い出してください。未来乃は導火線に火の付いた爆弾をふたつも放置していました。ファンの女の子から来たメールに返事を出さずにずっと放置していたこと。取材に行った劇団に失礼をはたらきながら、謝罪する方法を考えようともせず放置したこと。これだけのことを放置しっぱなしで次巻に続くだったのですから、未来乃の姉でなくても心配で胃が痛くなってしまいます。
 さて、3巻ではこれらの問題はなんとか解決の方向に向かい、未来乃も反省する機会を与えられます。しかし究極ダメ人間の未来乃はそう簡単には変わりません。あるみもふたもない言葉を繰り出して、前に進むことを拒否してしまいます。その言葉とは「めんどくさい」です。

「あたしだって、好きなことをしていてだれかに親切にできればうれしいけど、そんなの、あんまり思いつかないし、やらなきゃって思うとめんどくさいし、あたしには、絶対にこれがしたい、しなくちゃいやだってものが、そういう気持ちになることがないんですぅ」(p100)
「でも、何かを探したいかといえば、そういうのはめんどくさいなと思っちゃうんですけど」(p101)
(本物ならおしゃれって、どういうことなんだろう?不思議なことがありすぎて、考えだすとめんどくさいですぅ……)(p107)

 あまりにもひどすぎる。ここまで飾らずに人間のダメな面を描き出している児童文学は貴重です。未来乃の名言をもうひとつ。

「そういうときは、雲を見てると、どうでもよくなってくるんですねぇ」(p148)

 とりあえず3巻の結論は「めんどくさい」と「どうでもいい」ということで。シリーズの行く末が心配でものすごく楽しみです。