「ロストガールズ」(宮下恵茉)

ロストガールズ (物語の王国 6)

ロストガールズ (物語の王国 6)

小学6年生の玉緒は、小学校の卒業式用の服を買いに母親とデパートにやってきました。なんでも自分で決めてしまう母親に意見して、今度こそ自分の欲しい服を買おうと決意していた玉緒でしたが、やはり母親に勝手に服を選ばれてしまいます。玉緒は腹を立てて、自主的に迷子になります。そして、「迷子の天才」と名乗る金髪の奇妙な女の子と出会い、ふたりでデパート内をさまようことになります。
変化球の家出物語です。とにかく、母親が本気でむかつくところがいいです。こんなのが母親だったら家出したくなるのも無理はありません。
もっとも注目すべきところは、迷子になると不可視の存在になるという独自の設定です。迷子になった玉緒たちは誰からも見えなくなるため、デパ地下で好きなものを食べたり、化粧品売り場で化粧してみたり、傍若無人なふるまいをします。ここの罪悪感と楽しさの入り交じった高揚感がまたよいです。「迷子の天才」の女の子は、この現象の理由をこう説明します。

だからさ、人間は、特に大人ってのは、自分が見たくねぇものは見ねぇってことだよ。自分から迷子になるような、やっかいな子どもとは関わりたくないんだ。(p63)

迷子になって社会から外れることで、不可視の存在になるということなのでしょう。中には例外もあり、デパートに入り浸っている半分ぼけかかったようなおじいさんや、私服保安員のおばさんは迷子を見ることができます。ここでまた、社会から外れることの意味を考えさせられます。