- 作者: 宮下恵茉,たかおかゆみこ
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 2009/06/26
- メディア: 単行本
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変化球の家出物語です。とにかく、母親が本気でむかつくところがいいです。こんなのが母親だったら家出したくなるのも無理はありません。
もっとも注目すべきところは、迷子になると不可視の存在になるという独自の設定です。迷子になった玉緒たちは誰からも見えなくなるため、デパ地下で好きなものを食べたり、化粧品売り場で化粧してみたり、傍若無人なふるまいをします。ここの罪悪感と楽しさの入り交じった高揚感がまたよいです。「迷子の天才」の女の子は、この現象の理由をこう説明します。
だからさ、人間は、特に大人ってのは、自分が見たくねぇものは見ねぇってことだよ。自分から迷子になるような、やっかいな子どもとは関わりたくないんだ。(p63)
迷子になって社会から外れることで、不可視の存在になるということなのでしょう。中には例外もあり、デパートに入り浸っている半分ぼけかかったようなおじいさんや、私服保安員のおばさんは迷子を見ることができます。ここでまた、社会から外れることの意味を考えさせられます。