「モマの火星探検記」(毛利衛)

モマの火星探検記

モマの火星探検記

宇宙飛行士の毛利衛による火星旅行小説です。理系のはずの人が宇宙に行ってトンデモに目覚めてしまうケースがあるので少し不安を抱えながら読んでいました。残念ながら懸念は現実のものになってしまいました。一応自然科学の研究者が書いた小説なので、本の読者や媒介者がこれは科学的な話だと誤解する可能性は高いです。だからそういう人が気まぐれで小説を書くときは細心の注意を払ってもらいたいんですけどね。
2033年に人類史上初めて火星に到達したモマが、少年時代の自分に語りかける形式で火星での冒険を振り返る近未来SFです。宇宙旅行中には、同僚の宇宙飛行士の子供の亡霊が宇宙船内に現れたりと、いろいろ不思議な現象が起こります。それに対する説明がなんというか頭が痛くなってしまうものでした。ネタばらしになってしまうので一応隠してきます。



高度な知性を持つ異星人がひそかに見守っていて、未知の科学技術を使って宇宙飛行士たちをサポートしていたのだ。な・・・なんだってー!!あまりにも典型的すぎて、頭を抱えることしかできません。
また、涙が頬を落ちるシーンなど宇宙空間ではあり得ない描写をしていることも問題です。これに関しては後書きで「あえて気持ちが伝わるように地球的表現を残しました。」と弁解していますが、あまりにも読者の理解力を馬鹿にしています。その後「宇宙の常識は、地球に住む人にとって感動する文学になりえないのです」とまで断言してます。文学をなめすぎてはいまいか。ひょっとしてこの人は宇宙を舞台にしたSF小説を読んだことがないのでしょうか。
あ、表紙とイラストは非常に美麗なので、パラパラめくってみることはおすすめします。本文は読まなくていいです。