2010年の児童文学

どろんころんど (ボクラノSFシリーズ)

どろんころんど (ボクラノSFシリーズ)

人類がいなくなり泥だらけになった世界で、少女型ロボットやカメ型ロボットが冒険するSF作品、『どろんころんど』が今年のベスト児童文学です。この他にも森下一仁の『「希望」という名の船にのって』という本格SFが出たり、児童文学に新規参入した角川書店がSFに力を入れていたりと、今年はSF児童文学にとっては希望が持てる年になりました。この調子で10年代児童文学はSFが元気な時代になってもらいたいと思います。角川書店といえば、現時点で角川つばさ文庫最大の成果であるこの本に触れないわけにはいかないでしょう。角川つばさ文庫版アリスでは、河合祥一郎が原著の言葉遊びを日本語に巧みに取り込んでいます。okamaによるイラストもテニエル、ディズニーのイメージから脱却して日本らしいかわいらしいものになっています。これこそ日本のアリスの決定版と言えそうです。
忍剣花百姫伝7 愛する者たち (Dream スマッシュ!) (Dreamスマッシュ!)

忍剣花百姫伝7 愛する者たち (Dream スマッシュ!) (Dreamスマッシュ!)

カプリの恋占い 5 (フォア文庫)

カプリの恋占い 5 (フォア文庫)

幻霧城への道 マジカルストーンを探せ! Part7 (講談社青い鳥文庫)

幻霧城への道 マジカルストーンを探せ! Part7 (講談社青い鳥文庫)

やっぱりあたしが編集長!?―ハピ☆スタ編集部 (フォア文庫)

やっぱりあたしが編集長!?―ハピ☆スタ編集部 (フォア文庫)

今年完結した軽装版のシリーズものにも秀作が目立ちました。
最後の七月

最後の七月

行け! シュバットマン (福音館創作童話シリーズ)

行け! シュバットマン (福音館創作童話シリーズ)

ミクロ家出の夜に

ミクロ家出の夜に

リアリズム系ではこれらの作品が出色でした。長薗安浩の『最後の七月』は、小学生男子の頭の悪い世界を見事に描き出しました。『行け! シュバットマン』は、母親が特撮ヒーローのスーツアクターをしているという奇抜な設定ながら、現実を生きる痛みを活写した村中李衣らしい佳作でした。金治直美の『ミクロ家出の夜に』は、ファンタジー要素も交えつつ現代の貧困をリアルに描き、さらにそれを乗り越えようとする希望もうたいあげました。
レッツとネコさん (まいにちおはなし―レッツ・シリーズ)

レッツとネコさん (まいにちおはなし―レッツ・シリーズ)

高度に観念的なテーマを扱いながらも、幼児の見ている世界を魅力的に描いたひこ・田中の「レッツ」シリーズは、幼年童話の世界に新風を巻き起こしそうです。