『レッツがおつかい』(ひこ・田中)

『レッツとネコさん』『レッツのふみだい』に続く、レッツ三部作の完結編です。三作のタイトルを並べてみると、レッツと対象の間に挟まっている助詞がすべて違っているのがわかります。この助詞の違いにより、レッツがどのように世界と主体的に関わっているのかが如実に表れてきます。
『レッツがおつかい』では、おつかいがテーマということで、レッツは家庭や幼稚園から離れて一人で外の世界と対峙することになります。そして、レッツの認識と大人の認識の齟齬があらわになる様子が、ユーモアたっぷりに描かれています。
そもそも、レッツは誰からも頼まれず自発的におつかいに出ているので、出発点から間違っています。レッツは両親と一緒に「はじめてのおつかい」的なテレビ番組を見て、「おつかい」とはそういうものだと理解してしまったのです。
幼児と大人の認識の齟齬とともに、幼児の思考のスケールの錯誤を描いているところも面白いです。レッツはショッピングモールの人の多さを見てこんな事を考えます。

大きい 人が こんなに たくさん いると、ちきゅうは おもいだろうなと レッツは おもった。/年少さんを もっと ふやしたら ちきゅうが かるくなる。/でも、年少さんは うるさいから、ちきゅうが うるさくなるかもしれない。(p28)

幼児の思考の極端さがリアルにトレースされています。