『ちょんまげくらのすけ』(最上一平)

ちょんまげくらのすけ

ちょんまげくらのすけ

小学校のクラスが減ったり学校自体が統廃合されたりといった、人口減少社会を反映した現象が描かれる児童文学がちらほら登場してくるようになりました。しかし、この『ちょんまげくらのすけ』ほど極端な状況を提示した作品はあまりないでしょう*1
作品の舞台になっている山奥の村は、こんな状況になっています。

魚止には、十九けんの家がある。すんでいる人は三十三人だが、ねこは、六十ぴきはいるだろう。どこにいっても、ねこにあう。/小学生は、たったのひとり。二年生の、どうもとくらのすけだ。

猫の数というどうでもいい数字を出して深刻さを隠そうとしていますが、問題は世帯数と人口の比です。これは独居老人が多いということで、村の終末へのカウントダウンはすでに秒読みの段階に入っていることになります。
くらのすけには一緒に遊ぶ同年代の友達がいないので、さむらいになりきる空想遊びを特技としています。そんなくらのすけが、「月念仏」のあつまりの知らせを頼まれて、村中の家で口上を述べてまわるというのが、この作品のストーリーです。深刻な状況下でも明るく生きる庶民のたくましさがユーモアたっぷりに描かれている良作でした。

*1:『ぼくの学校ぼくひとり 』(宮川ひろ)という過疎の村を舞台にした作品が99年に出ている。