『ブタノさんのぼうけん』(小沢正)

ブタノさんのぼうけん

ブタノさんのぼうけん

1982年刊行の幼年童話『ブタノさんのぼうけん』の新装版が出ました。
退屈な日常に倦んだブタノさんは、「あなたのまいにちのくらしをあっとおどろくようなものにしてさしあげます」という新聞広告を見て、きつねのけんきゅうじょに行きます。そこで十本セットの雨傘を売りつけられます。
このセット、中に一本だけ開くとロケットのように空に飛び上がってしまうものが紛れ込んでいるという危険な代物でした。ブタノさんはけんきゅうじょに入る前に傘を持った運の悪いネズミが空に飛ばされるのを見たというのに、きつねの口車に乗ってセットを購入してしまいます。
小沢正は、平穏な日常なんてものはまやかしで、日常のありとあらゆるところにばくだんが仕込まれているという話をたくさん書いている人です。だから彼の童話には「ばくだんこぶた」などという頭のおかしい言葉が平然と出てきます。
この話にはわざわざロシアン雨傘を買って日常にばくだんを導入しようとする愚か者が登場します。好きこのんで危険を求める人間の心の中にもばくだんはあるのかもしれません。