- 作者: たつみや章,かなり泰三
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/07/26
- メディア: 単行本
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- 作者: たつみや章
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/02/10
- メディア: 文庫
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はじめに断っておきますが、これはわたしが好きなタイプの作品ではありません。子供の発達段階を無視したお説教をしているところなどは、あまり上品とは思えません。
しかし、この作品にも見るべき点はあります。それは、原発事故のシーンで人間のエゴイズムを如実に描いているところです。
水蒸気爆発が起きていよいよ危なくなってきたときに、それまで最悪の事故を防ぐため真剣に作業していた現場の職員たちが醜態をさらします。殴り合いまでしながら職場の電話機に殺到して(93年の作品だから携帯電話は普及していない)、家族にすぐに逃げるように指示を出したのです。
さらにこの場面で、主人公の父親が家族を田舎に引っ越しさせていた理由が、原発から遠ざけるためであったことが明らかにされます。ここで、家族を避難させるだけの収入のない職員の不満も吐露され、職員間の格差の問題にまで踏み込んでいきます。
結局、すでに別の事故で被曝していた職員の自己犠牲によって最悪の事態は防がれます。この被害者の数を最小限にするという意味のみで合理的な結末も、釈然としないものを残します。
人間の醜さをこれでもかと執拗に描いているので、小学生が読んだらかなりの衝撃を受けるのではないでしょうか。