児童文学は性の越境をどう描いてきたか その1 入れ替わり・性転換
児童文学は性の越境をどう描いてきたか その2 芸能と「女装」
3 「女装者」はどう描かれてきたか?
最後に、自発性を持ってある程度恒常的に「女装」している人間がどう描かれてきたのかを検証します。
- 作者: 丘修三,かみやしん
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1986/12/01
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 27回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
著者の丘修三は障害者が登場する話を多数書いており、弱者と共に歩もうとする作家として高い評価を得ています。その丘ですら80年代の段階では「異性装」に対してはこの程度の認識でした。これが時代の限界であったと理解すべきでしょう。
- 作者: 江川圀彦,高橋透
- 出版社/メーカー: くもん出版
- 発売日: 1986/06
- メディア: 単行本
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
- 作者: 西田俊也
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1997/03
- メディア: 単行本
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
- 作者: 魚住直子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/07
- メディア: 単行本
- クリック: 9回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
- 作者: 風野潮,亜沙美
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 2006/06/22
- メディア: 単行本
- クリック: 33回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
- 作者: 岡田依世子,うめだゆみ
- 出版社/メーカー: 新日本出版社
- 発売日: 2008/09/01
- メディア: 単行本
- クリック: 9回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
- 作者: 如月かずさ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/06/17
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 36回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
『カエルの歌姫』の主人公花咲圭吾は、カラオケで女性の声で歌うことをひそかな趣味にしており、その模様を匿名で動画サイトに投稿していました。圭吾は「指の形もごつごつしていて、薄い毛が指の背に生え始め、たいして日焼けもしていないのに浅黒」い自分の身体に嫌悪感を抱き、「女の子になりたい」という欲求を明確に表明しています。ただし、性指向は女性に向いています。
圭吾は性同一性障害、もしくはそれに類する状態にあるのか、それとも思春期の一時的な混乱に陥っているだけなのか。それを作中の情報から判断するのは困難です。しかし、圭吾がマイノリティの側にいることは確実です。
おわりに
以上、主に「女装」を中心として、性の越境をテーマとする現代日本児童文学を振り返りました。ジェンダーの問題に関しては、多数の作品が蓄積され、成果も上がっているようです。しかし、身体面の性の越境に踏み込んだ作品はまだ少数です。主人公の子供を性的マイノリティ当事者にしている例はほとんど見られません。この方面に関して児童文学はまだタブー意識を持っている、もしくは無関心であると結論づけざるを得ません。
児童文学の読者には当然、性的マイノリティの子供もいます。そういった子供の助けとなれるような、多様性を持った作品がたくさん生まれることが望まれます。
最後になりましたが、テーマに関わる作品の情報やアドバイスをくださった犬亦保明さん(@yasumisu)、くぼひできさん(@qvo_monogym)、黒石さん、佐々木江利子さん(@ERIGO30)、ちほさん(@chiho17)、梨屋アリエさん(@ariyanashie)、ホーリーさん(@holyhorizon) に感謝を申し上げます。また、せっかく情報をいただいておきながら、わたしの力不足で取り上げきれなかった作品があることをお詫びいたします。