その他今月読んだ児童書

モナミは世界を終わらせる? (銀のさじ)

モナミは世界を終わらせる? (銀のさじ)

バッタのフライが高価なため、自分の行動が世界の運命に直結してしまう少女モナミの物語。似たような設定の話はたくさんありますが、この作品では子供に実際の社会問題に目を向けさせることで、失われた中景を補完しようとしています。学校の先生が教育的に修正したセカイ系といった印象。ハルヒも一存もつばさ文庫になっているんだから、レーベルをいじるネタが意味をなさなくなっているんだけど、そこをあえてスルーするのはメタなギャグだと理解すべきなのか?
表面上は、生徒会メンバーが生徒会室でどうでもいい話をしておちゃらけているという話です。しかし、生徒会室はしばしばシリアスな真剣10代しゃべり場と化すので、児童読み物として健全といえば健全。シリアスさを前面に出さない作法で、読者に居心地のいい空間をつくっています。
図書室の日曜日 (わくわくライブラリー)

図書室の日曜日 (わくわくライブラリー)

「音楽室」「理科室」に続く村上しいこの日曜日シリーズ。本の落書きの犯人捜しから、ばかばかしい騒動が起こります。
図書室だとキャラクターを際限なく増やせるのがいいですね。モブシーンのイラストが楽しかったです。
むこうがわ行きの切符 (ノベルズ・エクスプレス)

むこうがわ行きの切符 (ノベルズ・エクスプレス)

タイムトラベルをテーマにしたSF短編集。かっちりした物語世界の中に人間の情念がうまく練り込まれていて、なかなか読ませます。
怪談えほん (1) 悪い本

怪談えほん (1) 悪い本

怪談えほん (2) マイマイとナイナイ

怪談えほん (2) マイマイとナイナイ

東雅夫の監修による岩崎書店の「怪談えほん」シリーズ。両作とも「もう逃げられない」感がものすごく、最終ページの印象が強く脳裏に焼き付けられます。
『悪い本』をみると、「悪」の存在をひたすらアピールする優しい語りかけによって、人間の抱える業の深淵に引きずり込まれるような気分になります。ぬいぐるみから露出したわたに虫がたかっているイラストがなんともいえません。
マイマイとナイナイ』は少女が幻想の世界に閉じ込められる話。皆川博子の美しい語りと宇野亜喜良の退廃性が見事に調和しています。
二番目のフローラ 上 (一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事)

二番目のフローラ 上 (一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事)

二番目のフローラ 下 (一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事)

二番目のフローラ 下 (一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事)

設定はいろいろと興味深いが、肝心のストーリーにあまり魅力を感じられませんでした。主人公が二番目(代用品)であるという設定も機能していなかったし。その辺は続編を読めということか?
チビ虫マービンは天才画家!

チビ虫マービンは天才画家!

ニューヨークに住む少年ジェームズと、その家に住む甲虫(ゴキブリではないとしつこく念押しされる)のマービンの友情物語。マービンの描いた絵がジェームズの作品と勘違いされ、さらにそれがアルブレヒト・デューラーに似ていると騒がれたことから、ふたりは絵画の盗難事件に巻き込まれることになります。甲虫たちが人間のものを利用して生活している様子が細かく描かれているところが、『床下の小人たち』のようで楽しいです。
イフ―王国の秘密

イフ―王国の秘密

魔法の王国に嫁ぐ王女が、王国に隠された秘密を探る話。登場人物の誰ひとりとして自分の真意を読者に明かさず、話はミステリアスに展開されます。本のデザイン、イラストの入れ方が洗練されていて、「命」に「真実」という大上段のテーマを盛り上げています。少し冗長なのが欠点ですが、読み応えのあるファンタジーでした。