その他今月読んだ児童書

クリーニングのももやまです (おはなしルネッサンス)

クリーニングのももやまです (おはなしルネッサンス)

主人公に平然と職業倫理に反することをさせ、それをさもいい話のようにまとめてしまうという、幼年童話らしいアナーキーさを持った作品です。タイヤにつかまって泳ぐ人魚がユニーク。学園祭まで長かった……。待たせただけあって、最高の盛り上がりを見せてくれました。
地雷原のポン

地雷原のポン

子供を地雷から守る妖怪(?)ポンの物語。詩情にあふれた文体によって、現実の悲惨さを純化して表現することに成功しています。
天游―蘭学の架け橋となった男 (くもんの児童文学)

天游―蘭学の架け橋となった男 (くもんの児童文学)

蘭学の研究者で緒方洪庵の師でもあった中天游の伝記物語です。ラストの演出が泣かせます。
リルラの手袋

リルラの手袋

昭和14年とだいぶ古い作品でかなり説教くさい内容なので、話自体はどう評していいかわかりませんが、市瀬淑子の水墨画調のイラストはよかったです。『イフ』もそうでしたが、未知谷は美しい本を作りますね。
ひみつ

ひみつ

ちょっと触りたくないくらい装丁がまがまがしいですね。中身も装丁に負けていません。「全国の書店員から絶賛の嵐」という軽い売り方をして読者を釣ろうとする講談社の黒さも怖いです。タイムエスパー第2弾。この人物だと宮中が舞台の地味な話になりそうですが、紫式部菅原道真の怨霊に襲われ、安倍晴明が助っ人として現れるという意表を突く展開で盛り上げてくれました。気弱で自分に自信を持てない紫式部という、小学生の読者が身近に感じられそうな人物造形もよいです。
怪盗クイーン、かぐや姫は夢を見る (講談社青い鳥文庫)

怪盗クイーン、かぐや姫は夢を見る (講談社青い鳥文庫)

鈍器……じゃなくて、怪盗クイーン久しぶりの新刊です。堀越組が大活躍!ケノが男の娘じゃなかった……。
ダーウィンと出会った夏

ダーウィンと出会った夏

19世紀末、アメリカ南部に住む少女キャルバーニアは、祖父の手ほどきで自然科学のおもしろさに目覚めます。しかし少女が学問の世界に生きることを時代は許しませんでした。
抑圧が強ければ強いほど少女の好奇心が輝いていきます。ささやかな日常のエピソードの積み重ねが巧みで、ゆったりと作品世界にひたっていたくなります。
本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)

本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)

信じがたい暴言が並べられたひどい本でした。『ゲド戦記』を、訳がよくなければ「とっくに消えている」作品だと断じ、『ホビットの冒険』も「色あせて感じられる」と否定。何より許しがたいのは、石井桃子と中川李枝子をつかまえて「女ども」呼ばわりして、公然と女性蔑視発言をしていることです。このような無礼な人物に岩波少年文庫を語らせる企画を立てた岩波書店の見識が疑われます。
ゲド戦記研究

ゲド戦記研究

ゲド戦記』はシリーズを追うごとに女性などの被差別者の他者性を解体してきたという方向で、論が進められています。