『グリフィンとお茶を』(荻原規子)

グリフィンとお茶を ?ファンタジーに見る動物たち?

グリフィンとお茶を ?ファンタジーに見る動物たち?

荻原規子が動物物語について語ったエッセイ集です。子供の頃から児童文学に親しんでいる読者であれば、旧友とお茶をしながら児童文学談義に耽っているような気分になれることでしょう。
「ライオン」の項は、「ライオンといえばアスランだ。ほかにはいない」と始まります。こういう導入だと、同意するにせよ異論を挟むにせよ、なにかいいたくなってしまいますね。自分もまねしたくなります。「ニシキヘビ」の項では、著者は『ジャングル・ブック』について語っていますが、自分だったら山中恒の『ママはおばけだって!』を挙げるだろうとか、「カメ」の項はありませんが、自分がやるとすれば「カメといえばカシオペイアだ。ほかにはいない」とするだろうとか、益体もないことを考えてしまいます。
荻原規子ならではの美点は、発達段階ごとの児童文学の読み方の違いを語れるところにあります。子供の頃の読み、学生になって文学を読み解く手がかりを手に入れてからの読み、さらに年齢を重ねてからの読み。たとえばナルニアであれば、子供の頃の純粋に物語や情景を楽しんでいた読み方に始まって、成長してから宗教寓話であることに気づき、さらに人生経験を積んでから回帰するという、三段階の視点から考察がなされています。
ル=グウィンの『いまファンタジーにできること』などを手がかりにファンタジーの本質を探った総論も読み応えたっぷり。すでに児童文学になじんでいる読者にとっても、これから児童文学の迷宮に入っていく読者にとっても、頼れる指針になるはずです。