『ふしぎな八つのおとぎばなし』(ジョーン・エイキン)

ふしぎな八つのおとぎばなし

ふしぎな八つのおとぎばなし

原題は『THE WINTER SLEEPWALKAR』。エイキンとクェンティン・ブレイクのタッグなので、どう考えてもまともな話にはなりそうにありません。実際、尋ね人は見つからず失せものは見つからず呪いは解けず、わかりやすいオチはつきません。さらに、ピンクのヘビや宇宙怪獣が大暴れするというフリーダムな世界が展開されています。
なかでももっともぶっとんでいたのは、「リコリスの木」です。火星人が村に怪獣を捨てたため、村人が生け贄の輪番表を作って対応するという話です。そこに脈絡なく「古き者たち」とやらから電波が飛んできて妙案を授けてくれ、村人は怪獣に立ち向かっていくことになります。SAN値が下がりそうな危ない話でした。
一方で、不気味に謎めいている話もあります。『怒り山』は、村で医療行為をしていた旅人がなぜか村人たちに虐殺されてしまう話です。明らかに設定の説明不足で、途中でぶつ切りにされたような終わり方になっています。しかし、旅人と村人の問答などの断片的な情報から物語の真実が垣間見えるような気がして、深みのある味わいを楽しめます。