その他今月読んだ児童書

幼年向けの絵童話あり、青い鳥文庫にも収録されていた長編「消えたおじさん」もあり、さまざまな仁木作品が楽しめる本になっています。林義雄や小林与志などのイラストが載っているのも嬉しいです。戦後の大衆児童文学を語る上でも重要な資料になっています。
じゃんけんのすきな女の子 (キッズ文学館)

じゃんけんのすきな女の子 (キッズ文学館)

1973年に刊行された『なぞなぞの好きな女の子』の姉妹編が約40年ぶりに出るという気の長さ。何事もじゃんけんで決めようとして大人を困らせている女の子が、ねこから家の居住権を賭けたじゃんけん勝負を挑まれる話です。二人がじゃんけんをしている同じような画面の繰り返しのなかで、きちんとねこの恐怖感を演出しているのが憎いです。福田隆浩の新シリーズ。
魔法使いハウルと火の悪魔―ハウルの動く城〈1〉

魔法使いハウルと火の悪魔―ハウルの動く城〈1〉

アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉

アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉

「空中の城」シリーズの3巻の邦訳が出るというので再読中。異常な世界を読者に強引に受け入れされる論理展開と構成のうまさにしびれます。自己同一性なぞなんのその。
ぽたぽた (名作童話集)

ぽたぽた (名作童話集)

三木卓による幼年童話集。1983年筑摩書房の加筆版。かげぼうしが外れてしまったり、トイレに流されるうんこに思いをはせてみたりと、幼児の生活実感にあった着想が楽しいです。オズの数々の魔法のアイテムが消失し、オズマ姫までもが行方不明に。オズに最大の危機が訪れます。オズのオールスターが活躍する豪華な本です。パッチワーク娘が最強。
とっておきの標語 (とっておきのどうわ)

とっておきの標語 (とっておきのどうわ)

シリーズ3作目。「ハートとハート りょうめんテープで、つけたいな」という恋の標語が、ほほえましいようでいて束縛欲を隠しきれておらず、ホラーでした。
クマに森を返そうよ

クマに森を返そうよ

タイトルから嫌な予感がするとおり、日本熊森協会の主張を鵜呑みにしたひどい本です。データに基づいて熊森協会批判者の意見を検証することも、著者独自の視点を出すこともなく、協会会長のありがたいお言葉をそのまま記述しているだけ。子供に読ませるなら、メディアリテラシーの教科書として使用しましょう。こんなものを読んだ子供が真に受けて、クマと人間がお友達になれると信じたら、誰が責任とってくれるんですか。