その他今月読んだ児童書

君の夜を抱きしめる

君の夜を抱きしめる

弱い者がさらに弱い者を虐げる構造を、助産師による妊婦いじめというかたちで描いているのがなんとも。
ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

魔法の力を持っているが使用法を誤るとひどい目に遭う駄菓子を商う駄菓子屋の話です。廣嶋作品にしてはダークさは中程度ですが、ときおり本性が出ています。
くらやみ こわいよ

くらやみ こわいよ

レモニー・スニケット作、ジョン・クラッセン絵。クラッセンの作品なら、こっちも長谷川義史の訳にした方がよかったのでは。
お面屋たまよし 彼岸ノ祭 (YA! ENTERTAINMENT)

お面屋たまよし 彼岸ノ祭 (YA! ENTERTAINMENT)

収録されている中編「邪面の村」は、閉鎖された村の醜悪なシステムを暴くという、きわめて日本児童文学らしい話でした。それだけに、その解決に超自然的な力を介在させてしまったことに違和感を抱きました。
アサギをよぶ声

アサギをよぶ声

こちらも閉鎖された村のシステムにあらがう子供の話。しかし、ジェンダーの問題ばかりを焦点化してしまったために、物足りない作品になってしまっていました。交易者との関わりや共産的な村の制度など、興味深い要素があったのに、そこが深められなかったのがもったいなかったです。
バンヤンの木 ぼくと父さんの嘘

バンヤンの木 ぼくと父さんの嘘

舞台は1957年のインド。病気で余命幾ばくもない父親に絶望的な社会状況を知らせず安らかに死なせようとして、家庭内情報鎖国を試みる少年の物語です。目的のためには手段を選ばず周囲の人々をだましたり脅したりして、しまいにはニセの新聞まで作ってしまう少年の行動力が魅力的です。大井三重子名義の作品が可能な限り収録されていて、しかも現在入手可能な「水曜日のクルト」収録作は初出のテキストを使って差別化するという豪華さ。論創社は神なのか。