- 作者: 藤田のぼる,早川純子
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 2013/04/15
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
一方、手紙をもらった熊田文子は、執筆時と今の自分の見解が変化したことに気づきます。このことにより、作者の権威を剥奪したかのように装っているのがこの作品の巧妙なところです。ついでに大人の権威も引きずり下ろします。介護施設と家のどちらにも違和感を持つ熊田文子の母親の家出、フミの先生の、実家からの独立という家出、フミの友達の家出など、様々な家出が作中に登場します。子供と大人を同じ地平に立たせて家出の意味について考察を深めていきます。
作中作と作中の家出のリアリティのレベルが変わらないので、読者は自分の立ち位置をつかみづらくなり、妙な浮遊感を味わわされます。これが変によい味わいになっています。なぜか登場人物を鶴と亀として描いている早川純子のイラストも奇妙にはまっていて、全体的にとらえどころのない不思議な本になっていました。