『衛星軌道2万マイル』（藤崎慎吾）

衛星軌道2万マイル (21世紀空想科学小説 6)

宇宙服を着た少年（なぜかしっぽが生えている）が巨大なイカ（？）と対峙するカバーイラスト、このレトロ臭・Ｂ級臭がたまらなくいいですね。21世紀空想科学小説第３回配本は、衛星軌道を舞台とした、銀河帝国の興亡などとは縁のないゆるめのスペース・オペラです。
オンボロ宇宙船〈彗星丸〉の仲間とともにデブリ生物を狩る宇宙漁師の少年石丸真哉の物語です。衛星軌道上には、スペースデブリでできた海棲生物の姿をした化け物が跋扈していました。それを駆除して宇宙の安全を守るのが、宇宙漁師の仕事です。
なぜデブリがマグロだのカジキだのになるのか、理由を深く考える必要はありません。ナＸＸＸンのいたずらだということにすれば、たいていのことは許されるのです。
宇宙船〈彗星丸〉の方も、船長がコスプレマニアでダース・ベイダーのような格好をしていたり、バグで通信システムのモニターから貞子が出てくるようになっていたりと、愉快な環境になっています。
続編への引きがあるラストになっているので、21世紀空想科学小説の２期が実現することを期待します。続きがあれば宇宙ゴミ大戦争になりそうですね。