『映画にもTVにもなったファンタジー・ノベルの魅力』(井辻朱美/編著)

井辻朱美による、映像化された児童文学のブックガイドです。紹介されている本は、古典枠の『美女と野獣』『不思議の国のアリス』から、新しいものでは『ハリー・ポッター』『世にも不幸なできごと』『ヒックとドラゴン』『グレッグのダメ日記』まで、多岐にわたっています。タイトルには「ファンタジー」とありますが、『ミセス・ダウト』や『サンサン』などリアリズム系の作品も取り上げられています。
執筆者は白百合女子大学の関係者ばかり。わかっている人が書いているという安心感の持てる、優秀なブックガイドになっています。
映像化作品の解説も、短いながら的確。特に、失敗した映像化作品への批判が辛辣で楽しいです。NHKアニメの『秘密の花園』については、「アニメのメアリーは、初めから髪が豊かでかわいい。マーサやディコンの肌の色も濃いし、原作とは違った趣がある」と、アニメのスタッフが原作の意図をみじんも理解していないことをエレガントに皮肉っています。ジブリの『ゲド戦記』は、「本作に対し、原作者のル=グウィンは、インターネット上で公式コメントを出している」との一言だけで一刀両断。ゴミのような映像化作品が多いことに胸を痛めている児童文学ファンが、溜飲を下げられる内容になっています。