- 作者: ジョン・ドノバン,小野章
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1979/02
- メディア: 単行本
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ジョンはサンと名付けたオオカミのみを友として、農場を切り盛りしていきます。しかしたったひとり(と1匹)でやっていけるはずがなく、当然のように破滅のときを迎えることになります。
彼には商取引をする相手はいますが、困ったときに手をさしのべてくれる隣人はいません。さらに、この家族は税金を払っていなくて行政上は存在しないも同然になっているので、そっちの支援も期待することができません。強引に現代の社会問題に結びつけると、無縁社会の闇を描いているようにもみえます。
もちろん、この作品の主題はその程度のものではありません。誰にでも平等に訪れる滅びがテーマです。
神は生もかんたんにあたえるが、同じように死もかんたんにあたえてしまう。
ちくしょう、兄きや姉きがそうじゃないか。とうさんもかあさんもそうだった。みんな死んでしまった。死ぬということも、生きるということと同じくらい、あたりまえのことだ。(p87〜p88)
サンとふたりきりで過ごす終盤の場面は、おそろしいほど静謐で美しいです。この作品を読んでしまった子どもは、さぞや深いトラウマを刻みつけられたことでしょう。