『ひそませること/あばきたてること』(澤田精一)

ひそませること/あばきたてること: 絵本編集の現場から

ひそませること/あばきたてること: 絵本編集の現場から

福音館書店の編集者・澤田精一の絵本論です。
澤田精一の代表作といえば、この本の表紙でもものすごい存在感を出している大竹伸朗『ジャリおじさん』、全ページのテキストは同じなのに絵がダイナミックな変容をみせるスズキコージ『きゅうりさんあぶないよ』など。よくいえば前衛的・実験的な作品ですが、一部の媒介者からは「わけわかんねーよ」と非難囂々だった作品でもあります。
目を付けた作家との接触から、作家との打ち合わせの様子、はては媒介者のクレーム対応まで、一般の読者からは見えにくい編集者の仕事の様子が紹介されています。特に興味深いのは、『ジャリおじさん』のテキストが、大竹伸朗の第1稿と澤田精一の手の入った決定稿の2バージョンがそのまま掲載されていることです。編集者の視点、編集者の仕事の一端がここから垣間見えます。
ほかにも、伝説的な児童文学評論誌「季刊ぱろる」に掲載された評論や対談などが多数収められており、絵本に興味のある人には必読の本となっています。