名探偵夢水清志郎の事件簿3 名探偵と封じられた秘宝 (講談社青い鳥文庫)
- 作者: はやみねかおる,佐藤友生
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/11/14
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (6件) を見る
わたしははやみねファンとしてはぬるいほうなので断言できませんが、もしかしてこれ、はやみね作品全部入りなのではないでしょうか。濃いファンであればあるほど楽しめる作品になっていることは間違いありません。
さて、このイベントに、財宝の隠し場所のありかが示されているといういわくつきの絵をめぐる脅迫状が舞い込みます。虹北商店街振興会会長がよく知ってる名探偵は放浪中なので、夢水清志郎が捜査の依頼を受けることになりました。探偵志望の伊緒は、怪人志望のルイがこの機に騒ぎを起こさないかと疑心暗鬼になります。
伊緒がルイを牽制しようとする方法がおもしろかったです。伊緒はある意図から、クラスメイトを事件が起こると思われる現場に同行させようとします。しかしその意図は、ルイにたやすく見破られてしまいます。
「だから、わたしがなにもしないよう、お局様たちもいっしょにいくようにした。わたしが、怪人という非日常の世界にはいらないよう、日常の代表選手みたいな彼女たちといっしょにいさせるようにした。」
(p78)
つまり伊緒は、物語世界に日常パートと非日常パートがあることを理解した上で、非日常を日常で侵食しようという策を練ったのです。さすがはやみねかおる、こうしたメタな遊びも平然とやってのけてしまいます。
以下、作品のトリックに触れるので、未読の方は絶対に読まないでください。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
この本では、心理操作系のトリックが複数回使用されていました。そして伊緒は、自分が表に出ることなく人を操って犯罪を行う幻影師のおぞましさに戦慄します。
「マリオネットを操って人形劇をやっている子どもは、マリオネットを自由に操るのが楽しいんだよ。それは、自分が舞台で演技するのとは、またちがう楽しさ。」――幻影師は、きっとそういうだろう。
自分の楽しみのためなら、ほかの人間がどうなろうが平気……それが、こわい。
(p173)
いや、本当にこわいですね。はやみ……じゃなくて幻影師。そもそも赤い夢の世界なんて、不健全なものに決まっています。その不健全さにきちんと向かいあっているところが、児童文学作家としてのはやみねかおるの美点です。