- 作者: 横山佳,スカイエマ
- 出版社/メーカー: BL出版
- 発売日: 2014/11/01
- メディア: 単行本
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作品の時代設定は90年代になっているとのことですが、古美術品を専門に狙う変装名人の怪盗が活躍するなど、材料はさらにレトロ趣味になっています。
京川七海は設定上は数々の難事件を解決して警察からの信頼も厚い名探偵ということになっていますが、作中では手柄はほとんど美音に奪われており、怪盗の挑戦状も七海宛ではなく美音宛にされるというぞんざいな扱い。怪盗も正体を隠す気は全くなく、真犯人の犯罪計画もおおざっぱ。もしかしたら、現代の本格色の濃い児童書ミステリを読み慣れている読者は、この作品をぬるさを欠点と感じるかもしれません。しかし、ぬるさこそがこの作品の長所になっているのです。
月原美音と春野真菜は、事務所入りした経緯から、それぞれの課題が果たされればそこを去らねばならないことになります。ということはこの作品は、子どもの居場所・遊び場所をめぐる物語という側面を持つのです。探偵事務所を子どもの遊び場所とするなら、探偵も犯罪者もぬるい大人であった方が楽しくなります。この作品のよさは、レトロ趣味で子どものための楽しい遊び場所を提供したところにあります。