『龍神王子! 1』(宮下恵茉)

龍神王子! ドラゴン・プリンス(1) (講談社青い鳥文庫)

龍神王子! ドラゴン・プリンス(1) (講談社青い鳥文庫)

あの胃痛系児童文学の第一人者宮下恵茉の新シリーズが売れ線のハーレムものということで、しばらく手を出すのをためらっていました。しかし読んでみるとまったく平常運転の宮下恵茉で安心しました。
主人公は、商店街でインチキ占いハウスを営む家に生まれた宝田珠梨。宝田家は龍神族と深いつながりのある家柄だということになっていて、『龍の宝珠』という宝物をかつて竜王から授けられたこともあると言い聞かせられていますが、実態は龍の着ぐるみをかぶって騒ぎまくるだけで、そんな話は信用できません。
『地味に生きる』を座右の銘とする珠梨なのに、家族が変わっているいるため小学校では悪質ないやがらせを受けていました。だから中学は家族のことを知る人のいない私立にがんばって学費免除を勝ち取って入学したのに、そこでは内部進学組と外部入学組の抗争、すなわち金持ちと庶民の階級闘争に巻き込まれて、平穏な生活を送れそうにありません。また宮下恵茉らしい胃痛ヒロインが登場しました。
さて、家の言い伝えは実は本当で、四神の王子である4人のイケメンが珠梨の周囲で龍王の後継者争いを繰り広げることになります。しかし、この男子の争いは学校での戦いに比べるとまったくどうでもいいものとして描かれています。男子が厨二チックな必殺技名を叫んで戦っているとき珠梨は、「小さい子が戦隊ごっこをするみたい」と全然緊迫感のないことを考えています。そう、こんなことより胃の痛くなることは、学校にいくらでもあるのです。
続編の紹介文を見ても、胃が痛くなりそうです。やはり宮下恵茉は宮下恵茉でした。