『聖クロス女学院物語1 ようこそ、神秘倶楽部へ! 』(南部くまこ)

「女子校のあいさつといえば『ごきげんよう』だと思ってる人って多いのよね」
「都市伝説だよね」
「すくなくともうちでは言わない」
「いや、たまにギャグで言う」(p40)

カソリック系お嬢さま校の中等部を舞台としたエス小説が、角川つばさ文庫に登場。その学校の1年生は正体を隠したお姉さまと文通ができるという伝統があり、初等部からの持ち上がりで中等部に入学した陽奈はお姉さまからの手紙を心待ちにしていました。しかし、中等部でともに学ぶのは内部進学の生徒だけではありません。受験で外部から入学してきた花音というなにかと騒ぎを起こす眼帯少女と縁ができてしまい、超常現象を研究する部活〈神秘倶楽部〉の創設を手伝わされることになり、陽奈の中等部生活は波乱含みでスタートします。
陽奈は初等部から女子校なので、女子校の現実を知ってはいますが、お姉さまにはそこそこ夢をみています。受験組の眼帯少女は現実を知らないので、女子校にかなりお花畑な夢を持っています。また、陽奈の父親は文通について「いわゆるメンター制度なんだろうな」と夢のないことを言って、陽奈の反感を買ったりします。
この三者三様の見方について、どれが正しいと判定することはできません。女子校というひとつの事象についても人によって多様な見方をすることができ、そのなかで陽奈は自分の立ち位置を確立していかなければなりません。このあたり、思春期の課題に正面から向き合っている児童文学として捉えることができます。