『隣の
鉄子』に続く、
田森庸介・
勝川克志コンビによるSF作品。未来人が様々な未来アイテムを持ってやってきて、未来世界がアレなことになっているという、これまた懐かしいタイプの楽しいSFになっていました。
開かない扉があったらハンマーでたたき壊す、パワータイプの怪盗の話。迷宮への入り口が洋服ダンスであったり、宝を守っているのが巨大なドラゴンであったりと、名作ファンタ
ジーを思わせる要素も盛り込みつつ、楽しい冒険が繰り広げられる、文句なしのエンターテインメントになっています。
『
ダッシュ!』に続く村上しいこのYA作品2作目は、短歌部小説です。アドバイザーとして
笹公人と千葉聡がついていたというのが豪華です。
変であること=個性があることを称揚するふりをしながら、勉強をがんばる・友だちと協調しないという個性はかたくなに否定してみせているのは、大人の身勝手な好みで子どものいい個性と悪い個性が切り分けられているという現状を皮肉ったブラックユーモアなのでしょうか。ブラックユーモアでないとすれば、このような欺瞞は子どものための文学にはふさわしくありません。
こみねゆらの無駄遣いもいいところです。
第55回
講談社児童文学新人賞の佳作。
福音館古典童話シリーズに、レオポルド・ショヴォーの編集・イラストによる『
狐物語』が登場しました。レオポルド・ショヴォーのそっけないようでねっとりした白黒のイラストは、弱い者や愚かな者は騙されて殺されるだけという『
狐物語』の世界によく合っています。映像作家の視点からショヴォーを評した
山村浩二による解説も要注目です。