『笑い猫の5分間怪談4 真冬の失恋怪談』(那須田淳/責任編集)

メリークリスマス、人間ども。
きょうは一年に一度のとくべつな日だ。
たのしんでるな、さびしさを。
家族も友だちも恋人もいっしょか?
かみしめてるな、ひとりぼっちを。
(序文より)

KADOKAWAが日本中の子どもたちに贈ったクリスマスプレゼントは、『笑い猫の5分間怪談』シリーズの第4弾でした。ゴスロリ少女が黒歴史ノートをみんなの前で晒されて失恋する場面からはじまり、最後には令丈ヒロ子の「失恋妖怪ユーレミ」を置くという凶悪な布陣。いったいKADOKAWAは、日本の子どもたちをどうしたいのでしょうか。
大枠のストーリーは、ゴスロリ少女ふくめた3人の子どもたちが、クリスマスのショッピングモールで笑い猫の妖怪に追いかけられ、怖い怪談を強制的に聞かされるというものになっています。ショッピングモールで追いかけっこというキャッチーな状況を、那須田淳がみごとに楽しく料理しています。okamaイラストによるクリスマスにデコられた妖怪やショッピングモールの風景も楽しいです。
短編で特に面白かったのは、緑川聖司の「お弁当」。遠足で弁当を忘れた子にみんなでおかずを分け与えてあげるという何気ないエピソードを、たった4ページできれいなショートミステリに仕上げています。
そして、長いシリーズになりそうな令丈ヒロ子のユーレミにも注目する必要があります。今回の、「そんなにこわくないよ! 失恋妖怪ユーレミ」というタイトルからして、怖い予感しか抱かせません。名刺に書かれた「そんなにこわくないよ! いい妖怪です」という文句も怪しさ大爆発です。失恋女子のハートを食べて癒してくれるというユーレミは本当にいい妖怪なのか。今のところは間抜けな姿が目立ちますが、食欲に支配されたときは結構怖い、彼女の本性が気になります。このシリーズはどんどん量産して早く1冊の単行本にまとめてもらいたいです。