『温泉アイドルは小学生! 2 暴走ママを止めて!』(令丈ヒロ子)

令丈ヒロ子の新シリーズ「温泉アイドルは小学生!」の第2弾。お笑いアイドルコンビを組んだことりと鞠香は、毎日一緒に仲良く下校する間柄になりました。そのため周囲の仲間は、ふたりは新しいアイドル活動のため放課後に特訓しているものだと思って期待していました。しかしふたりは、鞠香によって「堕落部屋」と名づけられたことりの部屋にこもって、ジャンクフードをむさぼりつつだらけるだけの日々を過ごしていたのです。そんなふたりに、結婚式で歌を披露するという仕事が回ってきます。ところが、ことりより自由で他人の話を聞かないことり母と、鞠香より堅物で裏表の激しい鞠香母があれこれ口出ししてきて、めんどくさいことになります。
令丈ヒロ子の魅力のひとつは、そのロジカルさにあります。人間の感情をなんとも明快にロジカルに説明してしまいます。たとえば、ことりと鞠香が堕落してしまった理由はこのように説明しています。

なにかがんばろうと思うのだが、今からジャージに着がえて、あせだくのストレッチにとりくむのは、やはり気が進まない。
もう少し気楽で、あせだくにならなくてすむような、身近でお手軽な「ちょっとがんばった」感じのことをしたい……。
(p17-18)

いや、ここまであからさまにダメ人間の心理を暴き立てなくてもいいじゃないかと思われるくらい、わかりやすくて残酷です。そんな令丈ヒロ子ですから、親子間の軋轢が生まれる理由も合理的に解き明かします。ところが困ったことに、親という生き物には理屈が通用しません。理屈だけで攻めても問題を解決することはできません。
個性の強い子どもでもなかなか親と対等に渡り合うことができず、ため息をつく悲哀。それでも正攻法・搦め手を駆使して親に立ち向かう攻防の盛り上がり。このあたり、師の山中恒の親子バトルもののようなおもしろさを味わえます。