その他今月読んだ児童書

世界一の三人きょうだい (児童書)

世界一の三人きょうだい (児童書)

両親がおばあちゃんの介護で家を空けるために、小学3年生のマキシとおむつのとれないお年頃のレオンは、ひとり暮らしの大学生の兄のアパートで1週間を過ごすことになります。とても優しい世界の話で、ちょっとした逆境のなかで三者三様によい変化をみせるさまがほほえましく、幸せな気分で読むことのできる作品になっています。
ラスト・ウィンター・マーダー (創元推理文庫)

ラスト・ウィンター・マーダー (創元推理文庫)

殺人鬼の親に英才教育を施されてしまった少年を主人公とする「さよなら、シリアルキラー」三部作が完結。毒親ものYAの異色作として語り継がれる作品になりそうです。選択することの重さを突きつけるラストは、味わい深い余韻を残します。
戦国ベースボール 卑弥呼の挑戦状! 信長vs聖徳太子! ! (集英社みらい文庫)

戦国ベースボール 卑弥呼の挑戦状! 信長vs聖徳太子! ! (集英社みらい文庫)

戦国ベースボール第3巻の対戦相手は、古代チーム。天国の聖徳太子は、規律あるスポーツである野球は自分の「和をもって尊しとなす」思想にぴったりだと思っており、推奨していました。ところが「和」とは正反対の地獄の戦国武将たちが野球をしていることを知り、「自分がつくるルールに、したがえないヤツはいらない――。」と、信長たちに喧嘩を売りに行きます。どうみても聖徳太子の方が悪役じゃないですか、天国行きと地獄落ちを振り分ける係の人、ちゃんと仕事して。
戦国ベースボール 最強コンビ義経&弁慶! 信長vs鎌倉将軍! ! (集英社みらい文庫)

戦国ベースボール 最強コンビ義経&弁慶! 信長vs鎌倉将軍! ! (集英社みらい文庫)

第4巻の対戦相手は、源義経率いる鎌倉チーム「鎌倉グッドカントリーズ」。「桶狭間ファルコンズ」は地獄の京都で修学旅行中でしたが、信長は本能寺に行きたくないので欠席していました。卑怯にも鎌倉チームは信長不在のときを狙って喧嘩を売ってきて、「桶狭間ファルコンズ」は主砲がいないという(エース不在はいつものことだが)最大のピンチを迎えます。
イケメン風を吹かせて余裕ぶっこいたプレーをする義経に泥臭く食らいついていく戦国チームという対比がうまく、試合展開はかなり熱くなります。あの人があの人らしくない奇策を見せるクライマックスの盛り上がりは、シリーズ随一です。
さっ太の黒い子馬 (文学の扉)

さっ太の黒い子馬 (文学の扉)

第56回講談社児童文学新人賞佳作。創作民話調の世界で少年が試練を経て成長する話。現代の児童文学は屈折しているので、こういう作品は逆に新鮮に見えてしまいます。文章や構成は手堅く実力のありそうな作家なので、現代の児童文学の弱いところをうまく埋めてくれそうです。
わたしたちの家は、ちょっとへんです (偕成社ノベルフリーク)

わたしたちの家は、ちょっとへんです (偕成社ノベルフリーク)

バンドガール! (偕成社ノベルフリーク)

バンドガール! (偕成社ノベルフリーク)

偕成社が、「てがるに ほんかく読書」をコンセプトとした新レーベル〈偕成社ノベルフリーク〉を始めました。ポップなイラスト・装丁が目を引きます。特に、題字とキャラクターを大胆に配置した『わたしたちの家は、ちょっとへんです』のデザインはすばらしいです。
わたしたちの家は、ちょっとへんです』は、いろんな家庭があってそれぞれ苦労があるけどなんとかうまくやっていこうという話を、堅実にまとめています。
『バンドガール』は、首都が北海道に移転された近未来の日本を舞台とした作品。小学生のバンド活動という入りこみやすい題材から、次第にディストピア感を出していく流れはうまいです。ただ、ポプラ社の〈初音ミクポケット〉で執筆した経験のある作家が、ボカロを悪役のように扱うのは、ちょっとどうかと思いました。