- 作者: 初見健一
- 出版社/メーカー: 大空出版
- 発売日: 2017/07/27
- メディア: 単行本
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たとえば、真面目な大人は深刻な社会問題を扱ったよい本だと評価している松谷みよ子の『死の国からのバトン』についてどのように言及されているか、みてみましょう。
小学校時代、本書は「図書室で一番怖い本」として有名だった。読んでいる子はほとんどいない。誰も読んでいないのに誰もが「怖い本」として知っている不思議な本だったのだ。
- 作者: 松谷みよ子,司修
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1976/02/01
- メディア: 単行本
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小学校低学年向けの本の章をみると、『からすのパンやさん』『ちいさいモモちゃん』『いやいやえん』『ぐりとぐら』と、現在も読み継がれている本が目立ちます。世代を超えるロングセラーの底力をみせつけられます。子どものころの読みと現在の読みを織り交ぜて作品に取っ組み合う著者をみていると、特に低学年向けの作品について語ることの難しさを痛感させられます。子どものころのあやふやなおもしろさの記憶を手探りしながら、大人の視点で理知的に作品を分析していく過程はスリリングです。あまんきみこの『車のいろは空のいろ』はタクシー怪談集であるといった、意外な視点の評論もあって読ませます。
紹介されている本にオカルト本が多いのが目につきますが、これも当時の子ども読者の実態をよく表しています。その頃の子どもはオカルト好きが多かったですし、本の好きな子であればなおさらです。正統な児童文学史では語られにくい児童文化の実態を知る上で、とても貴重な資料になっています。