その他今月読んだ児童書

スイーツ駅伝

スイーツ駅伝

スイーツたちが「ケーキ店選抜」「和菓子店選抜」「フルーツ選抜」「コンビニ選抜」の4チームに分かれて駅伝を繰り広げるスポーツギャグ童話。『めざせ日本一! 熱投!北海アニマルズvs熱々!大阪オイデヤス』路線のバカ一直線二宮由紀子が好きな読者なら大いに楽しめます。
新選 小川未明秀作小説20―未知の国へ

新選 小川未明秀作小説20―未知の国へ

1926年の「今後を童話作家に」以前の、愛児を喪ったトラウマが描かれた小説が多数収録された作品集です。これを読めば、子どもの死を描いた童話の永遠の金字塔「金の輪」に至る著者の歩みをたどることができます。
15歳、ぬけがら

15歳、ぬけがら

第57回講談社児童文学新人賞佳作受賞作。現代の子どもの貧困を描いた作品です。主人公が素直ないい子で善意の大人の支援にすんなり絡め取られる展開は若干甘いように感じられますが、現代の貧困の実態の一端を描いているだけでも作品の意義は十分にあります。
青いスタートライン (ノベルズ・エクスプレス)

青いスタートライン (ノベルズ・エクスプレス)

勉強できる子 卑屈化社会』という本が出ていることからわかるように、この国にはなぜか勉強が好きで楽しんでいる子どもを蔑視する奇妙な文化があります。そんな子を肯定する姿勢をみせているところに、この作品の希少性があります。
牛乳カンパイ係、田中くん 給食皇帝を助けよう! (集英社みらい文庫)

牛乳カンパイ係、田中くん 給食皇帝を助けよう! (集英社みらい文庫)

「牛乳カンパイ係、田中くん」3巻では給食皇帝(ロイヤルマスター)が登場。田中くんは、なにも食べることができなくなって衰弱している給食皇帝を助けるという試練を与えられます。
鍋をかぶった姿の給食皇帝を田中くんが「鍋仙人」と呼ぶのは、響きが危ない感じがしますが、ジャンプの集英社の本なので問題ないのでしょう。ジャンプ作品からの連想だと、今回の試練から『封神演義』終盤の文王のエピソードが思い出されます。太公望同調圧力で脅迫して文王に食事を取らせようとし、最終的にそれは間違いであったと反省しました。ところが田中くんは、その方法を肯定してしまいます。「和」を尊ぶシリーズの姿勢が、悪い方向に出てしまいました。
13歳は怖い (講談社青い鳥文庫)

13歳は怖い (講談社青い鳥文庫)

青い鳥文庫のホラーアンソロジー。しばらくおとなしめの作品ばかり出していた池田美代子が2作寄稿し、いままでの鬱憤を晴らすかのように血を流しまくっています。
辻みゆきの「やっと会えたね」は、青い鳥文庫読者よりその親世代にある意味精神的ダメージを与えそうです。伊藤クミコの「13星座のアイドル」は、女子グループの友情って麗しいよねという話。にかいどう青の「この先、いき止まり」は壁が襲ってくるという不条理もので、5作中で最も病んでいる感じがします。