『ねこのネコカブリ小学校』(三田村信行)

1981年から1998年にかけて10作刊行されていた、ねこの学校の校長先生を主人公とする「ネコカブリ小学校」シリーズの第1作。シリーズの初期は短編集、後期は長編の形式になっており、『ねこのネコカブリ小学校』には6作の短編が収録されています。
第1話「校長先生のえんそく」は、引率するはずだった遠足に遅刻した校長先生が、一行を追いかける話です。寝坊して学校に到着した校長先生は朝礼台に上がり誰もいない校庭に向かって出発の挨拶を始めます。ここですぐに、校長先生が三田村信行らしい不条理世界の住人であることが印象づけられます。佐々木マキの描くキャラクターの目つきも常軌を逸していて、危険なにおいがプンプン漂ってきます。
気になるのは、第2話「たぬきの見まわり」と第4話「パックリ先生のひみつ」です。第2話は、シリーズのレギュラーキャラとなる富豪たぬき田ねこ太氏の話です。たぬき田氏はねこに化けてねこの町で暮らしているたぬきですが、このエピソードで、ありのままの自分の姿で生きることを決意します。第4話はオオカミがねこに化けて小学校の先生になる話です。こちらは、正体が露見すると失踪してしまいます。
三田村信行は、社会のなかにまぎれこんだアウトサイダーを好んで描いています。代表的なのは、やはりオオカミである正体を隠して人間の世界で探偵をしている「ウルフ探偵」シリーズでしょうか。スズキコージと組んだ絵本『夜の大男』のデエラボッチも、強烈な印象を残します。
『ねこのネコカブリ小学校』は、アウトサイダーが社会にとけこめるケースととけこめないケースの両方を1冊の本で提示している点が興味深いです。