『王さまとかじや』(ジェイコブ・ブランク/文  ルイス・スロボドキン/絵)

四六時中大臣たちに管理されていてまったく自由がない8才の王さまの物語。日本の読者は寺村輝夫の王さまが思い出されるところです。ただしこっちの方が大臣の数が桁外れで、算数大臣・地理大臣・衣装大臣・馬大臣・お天気大臣と、数えていくときりがありません。もちろんこれは、大人に縛られている幼い子どもの状況の戯画化でもあります。
そんなある日、王さまと大臣たちは馬で森に赴きます。そこで、王さまのかんむりがカラスにひっさらわれるという事件が起こります。ここで融通の利かない大臣たちの無能さが露呈します。「ぬすまれたかんむりをとりもどす大臣」がいないために、誰にもどうすることができないというのです。こうして、宮廷の秩序の外側にいるかじやと本当はかしこい王さまに活躍の機会が訪れます。
ばかばかしくもシンプルで爽快なストーリーが楽しいです。もうひとつの大きな楽しみは、誰もがどこかで見たことのあるスロボドキンのイラストが多数収められているところ。幼児の本棚に仕込んでおいて間違いのない作品です。