『ぼさにまる ぼさぼさだっていいじゃない!』(伊藤クミコ)

2021年に誕生したサンリオの新キャラクター「ぼさにまる」の物語を、青い鳥文庫を中心に活躍している伊藤クミコが執筆。公式サイトによると、ぼさにまるの設定は以下のとおりです。

ふつうの動物の中に存在していた、みんなと少し違う道をえらぶ動物たち。たとえぼさぼさな時があってもいい、ありのままの自分で自分らしく生きることをモットーにしている。ぼさぼさのあにまる→「ぼさにまる」
達観した意見を持ちながら人間と関わっていく。
https://www.sanrio.co.jp/character/bosanimal/

3人の子どもがぼさにまると出会い、ぼさにまるからそれぞれの悩みを解決するヒントをもらうというストーリーです。子どもたちの心を解きほぐしていくぼさにまるの箴言がみどころです。
第1話の主人公の知花は、親友の完璧おしゃれ美人理央に毎日ふたごコーデを求められることを負担に感じていました。知花はぼさにまるの影響で自分らしいファッションの大切さを知り、カバー右下の人類には早すぎる攻め攻めコーデを強行します。それにしても攻めすぎでは。
第2話の主人公は大好きな知花が変わってしまったことに戸惑う理央。おしゃれにも投げやりになって、なにもしないぼさぼさのまま登校し、自分は本当はおしゃれが好きではなかったのだと思い悩んでしまいます。ここでのぼさにまるの言葉が、とてもよかったです。

「あたしも、たしかに前は、おしゃれがすきなんだって思っていた。でも、そうじゃなかったんだよ。だって、ほんとうにおしゃれがすきだったら、やめたいなんて思うわけがないでしょ?」(中略)
「え? ふつうに思いましゅよ?」(中略)
「いくらおしゃれがすきでも、めんどうくさいと思うときも、ありましゅよ。とうぜんじゃないでしゅか。」

根性論の根強い日本では、趣味にも極端な求道性が必要であるとされがちです。そういった思いこみを捨てさせ、趣味と生活のバランスのとれた生き方を指南するぼさにまるの言葉には、実用性があります。
第3話の主人公は、落ちこんでいる理央を心配している甲斐。ここで主人公が女子女子男子ときて百合からヘテロに落ち着いてしまうのではないかという懸念が持たれますが、それは杞憂になります。甲斐の関心は別の方向にずらされ、ある意味多様性の物語になります。
そういえばサンリオアニメの「ジュエルペット」シリーズでは、ある特性を持った男子が何人も登場していました。甲斐はまだまだ駆け出しですが、いつか『ジュエルペットサンシャイン』の御影くんの域に達せるよう精進してもらいたいと思います。